インバウンド需要を取り込む飲食店・小売店にとって見逃せない制度変更が迫っています。2026年11月1日から、外国人旅行者向けの消費税免税制度が「リファンド方式」に切り替わります。観光庁と国税庁は、免税店に対して早めの準備を呼びかけています(観光庁「消費税免税店サイト」、2026年9月確認)。施行まで残り5週間ほどとなった今、免税販売を扱う店舗が何を準備すべきかを整理します。
「リファンド方式」で何が変わるのか
現行制度では、免税店の店頭で旅行者に対して商品を税抜価格で販売できます。これに対し2026年11月1日以降は、免税店はいったん通常どおり税込価格で商品を販売し、購入者が出国時に空港や海港の税関で「日本国外へ持ち出すこと」を確認された後に、消費税相当額を返金(リファンド)する仕組みに変わります(観光庁「消費税免税店サイト」)。
観光庁の案内によれば、免税店側の実務としては次の対応が必要になるとされています。
- 購入者に対しては税込価格で販売すること
- 税関確認情報を確認したうえで、消費税相当額を返金すること
- 返金対応の準備として、契約している承認送受信事業者へ早めに連絡すること
- 自社システムで購入記録情報を送信している店舗は、購入者への直接返金または返金業務の委託を用意すること
また、1回の会計(購入記録情報1件)に含まれる商品のうち、税関で持ち出しが確認できないものが1つでもあると、その回の購入分すべてが免税として認められなくなる点にも注意が必要です(観光庁「消費税免税店サイト」)。
なぜ制度が変わるのか
国税庁の資料によると、今回の見直しは令和7年度税制改正に基づくもので、主眼は免税制度の不正利用の防止に置かれています(国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」)。免税購入対象者は、購入日から90日以内に出国して税関の確認を受ける必要があり、確認が取れて初めて免税が成立する仕組みになります。あわせて、これまであった「消耗品」と「一般物品」の区分や、消耗品にかかる購入上限額(50万円)も廃止される方向で整理されています。制度が厳格になる一方で、購入できる品目の範囲自体は広がる面もあるといえます。
店舗運営への影響
小規模な飲食店・小売店にとって、この変更は主に次の3点に影響します。
POS・レジシステムの改修
免税販売管理システムを通じて国税庁へ購入記録情報を送信している以上、システム側がリファンド方式に対応していなければ免税販売そのものを継続できません。POSベンダー各社は対応アップデートを進めている段階とみられ、繁忙期に差し掛かってから相談すると対応が間に合わない可能性も指摘されています。
返金という新しい事務作業
これまでは「レジで税抜価格を打って終わり」でしたが、今後は返金の原資をどう扱うか、誰が返金作業を担うかといった社内オペレーションの設計が必要になります。承認送受信事業者に返金業務を委託できるかどうかで、現場の負担は大きく変わります。
外国人観光客への説明対応
「なぜ今は税込価格なのか」「返金はいつ、どこで受けられるのか」を、購入時にきちんと案内できないと、会計時のトラブルやクレームにつながりかねません。多言語のリーフレットも用意されているため、レジ周りに掲示するなどの準備が有効です。
経営者が今すぐ取るべき対策
免税販売を行っている、または今後行う予定がある店舗は、次の準備を早めに進めることをおすすめします。
- POSベンダー・承認送受信事業者に今すぐ確認する 自店のレジやシステムがリファンド方式にいつ対応するのか、追加費用は発生するのかを問い合わせましょう。年末に向けた繁忙期の前に対応を終えておくと安心です。
- 返金オペレーションを決めておく 返金を自社で行うのか、委託するのかを早めに決め、レジ担当者が迷わず対応できるようマニュアル化しておきましょう。
- スタッフへの周知と接客トークの準備 「税込価格での購入になること」「出国時の税関確認後に返金されること」を、レジスタッフが簡潔に説明できるようにしておくと、当日のトラブルを防げます。観光庁が公開している旅行者向けリーフレット(多言語版)の活用も有効です。
- 公的な相談窓口を活用する 制度の一般的な相談は国税局の電話相談センター(0570-00-5901)、免税販売管理システムに関する相談は国税庁の免税販売管理システムヘルプデスク(0570-056-620)で受け付けています(観光庁「消費税免税店サイト」)。不明点は早めに確認しておきましょう。
インバウンド消費は多くの店舗にとって重要な売上源です。制度変更を「面倒な手続き」で終わらせず、早めの準備によって11月以降もスムーズに免税販売を続けられる体制を整えておきましょう。

