「現金のみ」に戻す店が増加|キャッシュレスをやめる前の3つの判断基準

現金のみに戻す店とキャッシュレスをやめる前の判断基準 ニュース解説

「当店はキャッシュレス決済をやめ、現金のみとさせていただきます」——こうした張り紙を掲げる飲食店や小規模店が、2026年に入って各地で少しずつ増えています。キャッシュレス比率が過去最高を更新し、政府が普及を後押しする一方で、あえて現金回帰を選ぶ店が現れているのはなぜでしょうか。本記事では、この動きの背景と、店舗経営者が「キャッシュレスをやめるべきか」を判断するための基準を整理します。

ニュースの要点:普及率は過去最高、しかし「現金のみ」に戻す店も

経済産業省が2026年3月31日に公表した集計によると、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%(決済額162.7兆円)となり、過去最高を更新しました。内訳はクレジットカードが最も多く、コード決済(QR決済など)は10.2%・16.6兆円規模まで拡大しています。政府は2030年までに65%、将来的には80%という目標を掲げ、普及の流れは今後も続く見通しです(出典:経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」2026年3月31日)。

その一方で、報道では「PayPay使えません」といった掲示を出し、現金決済へ戻す個人経営の飲食店が話題になっています。普及が進むほど、加盟店側では決済手数料や入金サイクルの負担が積み上がり、薄利の店ほど「支払う手数料に見合わない」と感じるケースが出てきているためです(出典:Yahoo!ニュース エキスパート・山路力也「『PayPay使えません』が増殖中 飲食店が『現金決済に戻す』背景と今後の展望は」)。

背景:手数料負担は10年で大きく膨らんだ

帝国データバンクの調査では、企業のキャッシュレス決済手数料の負担はこの10年でおよそ4割増え、とりわけ飲食店では負担が倍増したとされています(出典:帝国データバンク プレスリリース、PR TIMES掲載)。決済手数料は売上の数%にのぼることが多く、たとえばコード決済では条件により決済額の1.60%または1.98%、クレジットカードでは2〜3%台となる場合があります。原価率の高い飲食店では、この数%が営業利益を直接削る要因になり得ます。

経済産業省の検討会でも、加盟店が挙げる課題として「手数料などの運営コストが増加した」が最も多く、回答店舗の半数超が指摘したと報告されています。普及が進むほど、消費者の利便性と加盟店のコスト負担のバランスが問われる局面に入ったといえます(出典:経済産業省「キャッシュレス推進検討会 とりまとめ」2025年12月)。

店舗運営への影響:「便利さ」と「コスト」のどちらを取るか

現金のみに戻せば、手数料・端末費用・月額料金・入金までのタイムラグといった負担を一気に減らせます。資金繰りの面でも、その日の売上が即現金として手元に残る点は小規模店にとって魅力です。

ただし、失うものも小さくありません。若年層や訪日客はキャッシュレスを前提に来店先を選ぶ傾向が強く、「現金のみ」は機会損失につながりやすいのが実情です。加えて、レジ締めや両替、売上金の管理・防犯といった現金特有の手間とリスクが増える点も見落とせません。手数料を削れても、客数減や現金管理コストで相殺されれば本末転倒です。

経営者が取るべき対策:やめる前に確認したい3つの判断基準

1. 手数料の「実額」と客層を数字で把握する

まずは月間のキャッシュレス売上と支払手数料の実額を出し、「手数料が利益に占める割合」を確認します。あわせて、キャッシュレス利用客の比率や客単価、若年層・観光客の割合も把握しましょう。手数料の負担感だけで判断せず、やめた場合に離れる客層と失う売上を具体的に見積もることが出発点です。

2. 「全廃」ではなく「見直し」の選択肢を検討する

キャッシュレスをゼロにするのではなく、手数料率の低い決済手段に絞る、より条件の良い決済代行会社へ乗り換える、少額決済のみ現金優先を案内するなど、部分的な見直しも有効です。決済事業者ごとに料率や入金サイクルは異なるため、複数社を比較し、自店の客層に合う組み合わせを選ぶことで、利便性を保ちながら負担を抑えられます。

3. 値付け・原価の見直しとセットで考える

手数料はコスト構造の一部にすぎません。原価率や価格設定を見直し、必要に応じて価格に手数料相当分を織り込むことも、無理な現金回帰より現実的な選択になり得ます。決済手段の是非は、値付け・原価管理を含めた利益設計全体の中で判断することをおすすめします。

まとめ

キャッシュレス比率が58.0%と過去最高を更新する中で、あえて現金のみに戻す店が現れているのは、手数料負担が無視できない水準に達しているためです。とはいえ「やめる」判断は、失う客層と現金管理コストを踏まえて慎重に行う必要があります。手数料の実額把握、部分的な見直し、値付けとの一体的な検討——この3点を確認したうえで、自店にとって最適な決済のかたちを選びましょう。

出典

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