2026年度最低賃金、7月下旬に答申へ 店舗が今すぐ備える対策

ニュース解説

2026年度(令和8年度)の最低賃金改定に向けた議論が大詰めを迎えています。厚生労働省の中央最低賃金審議会・目安に関する小委員会は2026年7月10日に第2回会合を開き、労使双方が「引き上げの必要性」自体では一致しました。答申は7月下旬に予定され、例年どおりであれば8〜9月に各都道府県で新しい最低賃金額が発効します。前年度(2025年度)は全国加重平均が66円増の1,121円と、目安制度が始まった1978年以降で最大の引き上げ幅を記録しており、2026年度も相応の引き上げが見込まれます。人件費が経営コストの大きな割合を占める飲食店・小売店・テイクアウト店にとっては、早めの資金繰り計画と、負担を軽減する「業務改善助成金」などの支援策の活用が重要になります。

2026年度の最低賃金改定はどう進むか

厚生労働省の公表資料によると、2026年7月10日開催の「令和8年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会(第2回)」では、最新の賃金改定状況調査結果や経済指標をもとに審議が行われました。労働者側は前年度(66円増)を上回る引き上げを求め、経営者側は物価高による経営コスト増を踏まえた精緻な議論を主張しており、上げ幅を巡っては隔たりがある状況です(厚生労働省「令和8年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会(第2回)資料」2026年7月10日)。今後は7月17日・23日に小委員会が続けて開催され、7月下旬の目安答申後、各都道府県の地方審議会を経て8〜9月に金額と発効日が決定・公示されます。

参考として、2025年度は全国加重平均が前年の1,055円から66円増の1,121円となり、引き上げ率6.3%で全都道府県が時給1,000円を超えました。39道府県で目安額を上回る答申が出され、うち11県は目安を10円以上上回りました。政府はあわせて、最低賃金1,500円の全国目標を「遅くとも2030年代前半、できる限り早期に」達成する方針を2026年6月30日に正式決定しています。この流れを踏まえると2026年度も相応の引き上げが見込まれますが、答申前の現時点で確定額は未定です。正式な金額は7月下旬の答申と都道府県ごとの公示で確認してください。

店舗運営への影響 ― 人件費と人手不足の両面で圧力

最低賃金の引き上げは、アルバイト・パート比率の高い飲食店や小売店の人件費に直接影響します。時給を1円上げるだけでも、複数店舗・多人数のシフトを抱える事業者では月間・年間の人件費増が無視できない規模になります。さらに近隣同業他社との時給競争を招きやすく、「引き上げないと人が採れない・辞めてしまう」という間接的な圧力も強まります。

人手不足がすでに経営の限界点に達している店舗も少なくありません。帝国データバンクの調査によると、2025年度の人手不足倒産(法的整理・負債1,000万円以上)は441件と前年度比約1.3倍に増加し、3年連続で過去最多を更新しました。業種別では飲食店が21件で過去最多を更新しており、人手不足の深刻化が浮き彫りになっています(帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」2026年4月9日)。人件費上昇と採用難が同時に進む中、賃上げの原資確保が2026年後半の共通課題になりそうです。

経営者が今から取るべき3つの対策

対策1:自店の人件費インパクトを試算しておく

答申前でも、前年度の引き上げ幅(66円、6.3%増)を参考シナリオとして仮置きし、年間人件費への影響額を試算しておくと安心です。目安は「時給スタッフの月間総労働時間×想定引き上げ額」で月次増加額を概算できます。複数店舗を運営する場合は適用地域が異なることもあるため、答申額が出た段階で速やかに再計算できるよう、シフト表と時給データを一元管理しておくと対応が早まります。

対策2:業務改善助成金の活用を検討する

事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上につながる設備投資(券売機、注文用タブレット、調理・洗浄機器、POSレジなど)を行う中小企業・小規模事業者向けに、厚生労働省の「業務改善助成金」があります。令和8年度は2026年4月22日に交付要綱が公開され、交付申請の受付開始日は2026年9月1日です。助成率は引き上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4で、助成上限額は引き上げ額と対象人数に応じて設定されます。従来「地域別最低賃金との差額50円以内」に限定されていた対象要件が見直され、改定後の地域別最低賃金額を下回っていれば申請できる範囲に広がりました(厚生労働省「業務改善助成金」ページ、2026年4月22日更新)。申請には交付決定前に発注・支払いをしないことなど細かな要件があるため、業務改善助成金コールセンター(0120-366-440、平日9:00〜17:00)に相談し、最新の交付要綱で要件を確認することをおすすめします。

対策3:値付け・シフト・省力化の3方向で原資を作る

助成金だけに頼らず、恒常的な人件費増に耐えられる収益構造を作ることも欠かせません。現場では以下の3つを並行して見直す店舗が多い印象です。

  • 価格改定の検討:主要メニュー・商品の原価率を点検し、人件費上昇分を吸収できているか確認する。値上げ幅は原価・人件費上昇分を合算し2〜5%程度に収める店舗が多い
  • シフトの精度向上:時間帯別の客数データをもとに、ピーク以外の人員配置を1〜2割絞れないか見直す。シフト管理アプリで勤怠と人件費をリアルタイム可視化する方法も有効
  • 省力化投資:セルフレジ・モバイルオーダー・調理補助機器を導入し、少人数でも回せる体制に近づける。業務改善助成金の対象経費に該当しうるため組み合わせて検討する

一度に大きく変えるのではなく、答申後の確定額を踏まえて優先順位をつけ、段階的に実行するのが実務的です。

まとめ

2026年度の最低賃金は7月下旬に中央最低賃金審議会の答申が示され、8〜9月にかけて都道府県ごとに確定・公示される見通しです。前年度が過去最大の66円引き上げだったことを踏まえると、今年度も店舗経営への影響は小さくないと考えられます。確定額が出るまでの間に、人件費インパクトの試算、業務改善助成金の活用検討、価格・シフト・省力化の見直しという3つの準備を進めておくことで、答申後の対応をスムーズに進められます。最新情報は厚生労働省や都道府県労働局の公式発表を随時確認してください。

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