セルフレジに全米初の規制法|米ロードアイランド州、日本の店舗への示唆

米ロードアイランド州が全米初のセルフレジ規制法を成立させたことを伝えるアイキャッチ画像 ニュース解説

人手不足を背景に、日本のスーパーや小売店ではセルフレジ・セミセルフレジの導入が当たり前になりつつあります。ところが、セルフレジ先進国であるアメリカでは、いま「セルフレジを規制する」動きが広がっています。2026年6月、米ロードアイランド州が全米で初めて、州全体でセルフレジの運用を規制する法律を成立させました。人手を減らすための仕組みに、なぜブレーキがかかったのか。日本の店舗経営者にとっても示唆に富む話題として、要点を整理します。

ニュースの要点:全米初、セルフレジに「有人レジとの比率」を義務化

ロードアイランド州は2026年6月、州法「Restrictions on Self-Service Checkout Stations Act」(下院法案7290号・上院法案2342号)を成立させました。州全体でセルフレジの設置台数に規制をかけるのは全米で初めてで、施行は2027年1月1日からです(出典:Grocery Dive/Littler)。中心的な内容は次のとおりです。

項目内容
配置比率セルフレジ3台につき、有人レジを最低1台稼働させる
従業員の専任義務セルフレジを見守る従業員は、有人レジ対応など他の業務を兼務させてはならない
適用の除外混雑しない時間帯(午前8時前・午後8時以降)、非常事態宣言時、荒天警報時は比率の適用外
罰則初回は書面による警告。繰り返した場合、時給レジ係の最高時給×4時間分に相当する額を1日あたり科す(上限は1日500ドル)
出典:Littler/Grocery Dive の報道をもとに作成

さらに特徴的なのは、従業員だけでなく消費者も違反を州の労働訓練局に申し立てできる点です。申し立てをした人への報復は禁じられ、違反の是正を怠った店舗は州の不公正取引法上の「違法行為」とみなされます(出典:Littler)。

背景:セルフレジがもたらした「万引き」と「従業員の負担」

この法律を後押ししたのは、食品・小売の労働組合UFCW(Local 328)です。同州の議会の説明によれば、立法の狙いは、セルフレジが従業員に過度な負担をかけ、とくに高齢の買い物客を戸惑わせているという問題意識にありました。あわせて、セルフレジで増える万引き(ロス)を抑える目的も挙げられています。UFCWは、ロードアイランド州の小売業が2022年に盗難で2億4,400万ドルの損失を被ったとする調査(Capital One)を引き合いに出しています(出典:Grocery Dive)。

この動きはロードアイランド州だけではありません。カリフォルニア州では、ロングビーチ市(2025年9月施行)を皮切りに、コスタメサ市、サンタアナ市が「セルフレジ3台に従業員1人」という、ほぼ同内容の条例を相次いで施行。これらの条例では会計点数を15点までに制限したり、違反に対して従業員1人・1日あたり最大1,000ドルの罰金を科したりする例もあります。さらにマサチューセッツ州、ニューヨーク市、オハイオ州などでも同様の法案が検討されています(出典:Littler)。人手削減の切り札とされてきたセルフレジに対し、「雇用と接客品質を守る」という視点からの揺り戻しが起きているのです。

日本の店舗運営への影響:セルフ化は「入れて終わり」ではない

日本ではこの種の規制はまだありませんが、アメリカで表面化した課題は、そのまま日本の店舗のリスクでもあります。第一に、万引き・会計ミスによるロスです。有人レジより目が届きにくいセルフレジは、意図的な不正だけでなく「スキャン漏れ」も起こりやすく、利益を静かに削ります。第二に、高齢のお客様への対応です。操作に戸惑う来店客が増えれば、結局は従業員が付きっきりになり、「省人化したはずが手が空かない」という状況に陥りかねません。アメリカの法律が「見守り担当を専任にせよ」と定めたのは、まさにこの現場実態を映したものといえます。

経営者が取るべき対策

セルフレジ・セミセルフレジを導入する(あるいは既に導入している)店舗が意識したいのは、次の3点です。

  1. 見守り体制を設計する:セルフレジ台数に対して何人を配置するか、繁忙時間帯だけでも「専任の見守り役」を置けるかを、シフトの中であらかじめ決めておきます。「レジを兼務しながら片手間で見る」体制は、ロスとクレームの温床になりがちです。
  2. ロス対策を数値で管理する:ゲート式や重量チェック、AIカメラなど不正検知の仕組みを検討しつつ、棚卸差異(ロス率)を定期的に把握し、セルフレジ導入前後で比較します。感覚ではなく数字で効果と副作用を見ます。
  3. 高齢者・不慣れな客への導線を用意する:有人レジを一定数残す、操作案内のスタッフや分かりやすい表示を置くなど、「使いづらい人を置き去りにしない」設計が、結果的に回転率とリピートを守ります。

まとめ

ロードアイランド州の新法は、「セルフレジは万能ではない」という現場の声が、法律という形になった事例です。日本の店舗にとっても、セルフ化は人手不足対策の有力な一手であると同時に、ロス・接客品質・従業員負担という別の課題を伴います。導入の是非そのものより、「どう運用を設計するか」で成否が分かれる——アメリカの動きは、そう教えてくれています。なお、本記事は海外の法制度の紹介であり、法的な助言を目的とするものではありません。具体的な対応は各店舗の状況に応じてご判断ください。

出典

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