高年齢労働者の労災防止が努力義務化|店舗の対策と補助金

高年齢労働者の労災防止が努力義務化 店舗の対策とエイジフレンドリー補助金 ニュース解説

シニア人材の活躍が広がる一方で、店舗の現場では高年齢のスタッフが転倒したり腰を痛めたりする労働災害が増えています。こうした状況を受け、2026年4月に施行された改正労働安全衛生法により、高年齢労働者の労災防止措置が全事業者の「努力義務」となりました。あわせて、対策費用を補助する「エイジフレンドリー補助金」も令和8年度は予算が拡充されています。本記事では、制度の要点と、飲食店・小売店の経営者が取るべき具体的な対策を、公的情報をもとに整理します。

ニュースの要点|高年齢労働者の労災防止が「努力義務」に

改正労働安全衛生法に新たに設けられた第62条の2により、事業者は高年齢労働者の身体機能の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理などに努めることが求められるようになりました。これを具体化する「高年齢者の労働災害防止のための指針」が2026年2月10日に公示され、2026年4月1日から適用されています。従来の「エイジフレンドリーガイドライン」は、この法令に基づく指針へと移行しました(出典:厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針」)。

「努力義務」であるため罰則はありませんが、法令に根拠を持つ指針として位置づけられており、事業者が対策に取り組むことが明確に求められます。従業員数の少ない中小の店舗も対象で、業種を問わずすべての事業者に適用されます。

背景|労災の3割が60歳以上に

この改正の背景には、労働災害に占める高年齢者の割合の高まりがあります。厚生労働省によれば、労働災害による死傷者に占める60歳以上の割合は上昇を続け、近年は全体の約3割に達しています。飲食店の厨房やホール、小売店の品出し・搬入といった作業では、転倒、墜落・転落、腰痛(動作の反動・無理な動作)などが起こりやすく、加齢に伴う視力・筋力・バランス機能の低下がリスクを高めます。

政府は、高年齢者の安全衛生対策に取り組む事業場の割合を2027年までに50%以上へ引き上げる目標を掲げていますが、現状は2割程度にとどまるとされています。人手不足を背景にシニア人材の採用が広がるなか、店舗にとっても看過できないテーマといえます(出典:厚生労働省「高年齢労働者の安全衛生対策について」)。

店舗運営への影響

今回の努力義務化は、店舗経営に次のような影響をもたらします。第一に、シニアスタッフを雇用する店舗は、職場の危険箇所の点検や作業方法の見直しといった安全配慮への取り組みが、これまで以上に明確に求められます。第二に、万一労災が発生した場合、指針に沿った対策を講じていたかどうかが、安全配慮義務をめぐる評価に影響する可能性があります。第三に、対策の遅れは休業や欠員につながり、ただでさえ厳しい人員繰りをさらに圧迫します。裏を返せば、安全な職場づくりは、貴重なシニア人材に長く安心して働いてもらうための投資でもあります。

経営者が取るべき対策

1. 危険箇所を洗い出す(リスクアセスメント)

まずは店舗内を点検し、高年齢スタッフにとって危険な箇所を洗い出します。床の段差や濡れ・油による滑り、暗い通路や階段、重い荷物の運搬、高所への手作業などが典型例です。実際に働くスタッフの声を聞きながら、危険の大きい箇所から優先順位をつけて対策します。

2. 設備・環境を改善する

転倒防止のための床材の変更や段差解消、手すりの設置、通路や作業場の照度アップ、重量物運搬を助ける台車やカートの導入などが有効です。大がかりな工事でなくても、滑り止めマットや見やすい表示といった小さな工夫から始められます。

3. 作業方法と健康管理を見直す

一人で重い物を持たない運用、無理のないシフトや休憩の確保、腰痛予防のストレッチの導入など、作業管理の面からもリスクを下げられます。体調の変化に気づける声かけや、健康診断結果を踏まえた配置の工夫もあわせて進めましょう。

4. 「エイジフレンドリー補助金」を活用する

これらの対策費用は、厚生労働省の「エイジフレンドリー補助金」で軽減できます。60歳以上の労働者を雇用する中小企業事業者を対象に、労災防止のための設備導入や専門家によるリスクアセスメントなどの費用の一部(補助率2分の1)が補助されます。令和8年度は予算が拡充され、交付申請は2026年5月20日から10月31日まで受け付けられています。ただし、専門家によるリスクアセスメントを含むコースの第1段階の申請期限は2026年8月31日と早いため、活用を検討している店舗は早めの確認が必要です。詳細な要件・上限額・コース区分は、必ず公式情報で確認してください(出典:厚生労働省「エイジフレンドリー補助金」)。

まとめ

高年齢労働者の労災防止対策の努力義務化は、シニア人材に支えられる店舗にとって、避けて通れない課題です。まずは店舗内の危険箇所を点検し、優先度の高いところから設備・作業・健康管理の改善に着手しましょう。費用面ではエイジフレンドリー補助金が後押しになります。安全な職場づくりは、法令対応にとどまらず、人材の定着とサービス品質の向上にもつながる前向きな投資です。最新の制度内容は、厚生労働省の公式発表を一次情報として確認するようにしてください。

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