深刻な人手不足を外国人材で補ってきた飲食業界に、大きな転機が訪れています。特定技能「外食業分野」の新規受け入れが2026年4月13日から原則停止され、再開の見通しは立っていません。制度開始(2019年)以来、分野全体での長期的な受け入れ停止は初めての措置です。本記事では、何が起きたのか、なぜ停止に至ったのか、そして中小の飲食店・小売店を営む経営者が今すぐ取るべき対策を整理して解説します。
ニュースの要点|外食業の特定技能が「受け入れ上限」に到達
農林水産省と出入国在留管理庁は、外食業分野の特定技能1号の在留者数が2026年5月頃に受け入れ見込み数(上限5万人)を超える見込みとなったことを受け、2026年4月13日以降、在留資格認定証明書の一時的な交付を停止する措置をとりました。これにより、海外からの新規呼び寄せや、留学生アルバイトなどから特定技能への在留資格変更が原則としてできなくなっています。あわせて、外食業特定技能1号評価試験も当面の間、国内外ともに実施されていません。
一方で、すでに働いている外国人材の在留継続や、外食業分野内での転職などは、一定の条件のもとで引き続き可能とされています。詳細な取り扱いは、農林水産省が公開している停止措置に関する案内やQ&Aで確認できます(出典:農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」)。
なぜ停止に至ったのか|制度の仕組みと背景
特定技能には分野ごとの「受け入れ上限」がある
特定技能は、生産性向上や国内人材の確保に取り組んでもなお人手が足りない産業分野で、一定の技能を持つ外国人材を受け入れる制度です。分野ごとに一定期間の受け入れ見込み数(上限)があらかじめ定められており、外食業分野では令和6年度からの5年間で5万人が上限とされていました。この枠に達すると、新規の受け入れは停止されます。
外食業が16分野で最初に上限へ
農林水産省の公表によれば、外食業分野の在留者数は2026年5月頃に上限の5万人を超える見込みとなり、この見通しを受けて4月13日からの停止措置が講じられました。外食業は多くの分野の中でいち早く上限に近づいた形で、労働集約的かつ離職率も高く、外国人材への依存度が急速に高まっていたことが背景にあると考えられます。同じく飲食料品製造業も特定技能の対象分野であり、小売やテイクアウトに関わる食品製造の現場でも決して他人事ではありません(出典:農林水産省「外食業分野における1号特定技能外国人の受入れ停止措置について」)。
店舗運営への影響|採用計画の前提が変わる
今回の停止措置は、外国人材の採用を前提に人員計画を組んできた店舗に直接的な影響を及ぼします。具体的には、次のような場面で注意が必要です。
- 海外からの新規呼び寄せによる採用ができなくなり、新規開店やシフト増員の計画が立てにくくなる。
- 店舗で働く留学生アルバイトを、卒業後に特定技能へ切り替えて戦力として残す採用ルートが原則使えなくなる。
- 採用市場で日本人スタッフの獲得競争が一段と激しくなり、人件費の上昇圧力が強まる。
- 在籍中の外国人材が外食業内の他店へ転職する動きが出れば、既存店でも人員が流出しかねない。
人手不足による人件費上昇は、最低賃金の引き上げとも重なり、店舗の収益を圧迫します。すでに2026年は飲食店の倒産が高水準で推移しており、採用難は経営の存続に関わるリスクと捉えるべきでしょう。
経営者が取るべき対策
1. 既存の外国人材の「定着」を最優先にする
新規採用が難しくなった今、最も重要なのは今いる人材に長く働いてもらうことです。日本語でのコミュニケーション支援、キャリアパスの提示、公正な評価と処遇、生活面のサポートなど、外国人材が安心して働ける環境づくりが、そのまま人員確保につながります。特定技能に関する無料相談窓口(農林水産省の補助事業として運営)も活用できます。
2. 採用チャネルを多様化する
外国人材の新規枠に頼れない以上、シニア層・主婦(主夫)層・学生・短時間勤務者など、これまで採りきれていなかった層への間口を広げることが有効です。勤務時間の柔軟化や、短時間でも回せる業務設計を進めることで、応募の母数を増やせます。
3. 省人化・生産性向上に投資する
「人を増やす」だけでなく「少ない人数で回す」発想への転換も欠かせません。セルフオーダーやモバイルオーダー、券売機、配膳・下げ膳の効率化、POSやシフト管理ツールによる業務の見える化などで、一人あたりの生産性を高めましょう。省力化投資や賃上げに使える補助金・助成金と組み合わせれば、投資負担を抑えられます。
4. 2027年施行の「育成就労制度」に備える
技能実習に代わる新たな在留制度「育成就労制度」が2027年4月に施行される予定で、外食業・飲食料品製造業も対象分野に含まれます。育成就労を経て特定技能へつなげる新たな人材ルートが整う可能性があるため、制度の運用要領や説明会の情報を早めに確認し、受け入れ体制(協議会への加入など)を計画的に準備しておくことが、再開後にいち早く動くための備えになります。
まとめ
特定技能「外食業分野」の新規受け入れ停止は、外国人材ありきだった採用戦略の見直しを店舗経営者に迫るものです。再開が未定である以上、「今いる人材の定着」「採用チャネルの多様化」「省人化投資」「育成就労制度への備え」という4つの軸で、腰を据えた人材戦略へ切り替えることが求められます。制度の最新情報は、農林水産省や出入国在留管理庁の公式発表を一次情報として確認するようにしましょう。
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出典
- 農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて/1号特定技能外国人の受入れ停止措置について」(令和8年3月27日ほか)https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/gaikokujinzai.html

