10月から、パンや麺、洋菓子の原料となる輸入小麦の国の売渡価格が上がります。小麦粉を使うメニューが多い店舗では、仕入れ値の見直しを早めに始めたいところです。この記事では、発表内容の要点と、飲食店・小売店が取れる対策を整理します。
輸入小麦の政府売渡価格、10月期は12%の引き上げ
農林水産省は2026年9月9日、輸入小麦の政府売渡価格を改定すると発表しました。5銘柄の加重平均は1トンあたり70,020円で、前期の62,520円から7,500円、率にして12.0%の上昇です(出典:農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」(2026年9月9日))。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改定後の平均価格 | 1トンあたり70,020円(5銘柄加重平均) |
| 前期の平均価格 | 1トンあたり62,520円 |
| 上げ幅 | +7,500円(+12.0%) |
| 適用開始 | 2026年10月期 |
食品新聞の報道によると、7万円台に乗るのは2023年4月期以来とされています(出典:食品新聞(2026年9月9日))。小麦は国が輸入して製粉会社へ売り渡す仕組みで、この価格が国内の小麦粉価格の土台になります。
背景:国際相場・海上輸送費・円安が重なった
売渡価格は、直近6か月間の買入価格の平均をもとに算定されます(農林水産省の発表による)。今回の上昇要因として、食品新聞は次の点を挙げています。
- 米国など主要産地の天候不安を受けた国際相場の上昇
- ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化
- 中東・ホルムズ海峡をめぐる緊張による燃料費・海上運賃の上昇
- 円安の長期化
なお、農林水産省の発表資料には小麦粉や最終商品の価格への波及については記載がありません。製粉会社による価格改定の有無や幅は、今後の各社発表を確認する必要があります。
店舗運営への影響:小麦粉を使うメニューほど原価に響く
影響を受けやすい業態
ラーメン・うどん・パスタなどの麺類、パン・ピザ・お好み焼き・たこ焼き、天ぷらやフライの衣、洋菓子・ベーカリーなどは、小麦粉が原材料の中心です。仕入れ先の卸や食材メーカーが値上げを転嫁してくると、原価率にじわじわ効いてきます。
外食需要は堅調だが、単価上昇には限度がある
日本フードサービス協会の集計では、2026年8月の外食売上高は前年同月比4.9%増、客数2.6%増、客単価2.3%増でした(出典:流通ニュース(2026年9月25日))。需要は底堅い一方、業態別ではパブ・居酒屋が0.6%増にとどまるなど差があります。客足が好調でも、値上げをどこまで受け入れてもらえるかは店ごとに異なります。
ここで、原価への影響を大まかに見積もる方法を紹介します(数値は説明用の仮定です)。月の小麦粉・小麦加工品の仕入れが20万円の店で、仕入れ値が10%上がると、月2万円、年24万円のコスト増になります。自店の仕入れ実績に当てはめて試算してみてください。
経営者が取るべき対策
1. 小麦関連の仕入れ額を洗い出す
直近3か月の仕入れ伝票から、小麦粉・パン粉・麺・皮・生地・冷凍加工品などの仕入れ額を集計します。どのメニューにどれだけ含まれるかが分かれば、影響額の試算ができます。
2. 仕入れ先に価格改定の予定を確認する
卸・食材メーカーに、値上げの有無と時期、幅を早めに問い合わせましょう。改定通知は1〜2か月前に届くことが多く、見落とすと利益を圧迫します。複数社から見積もりを取り、規格や内容量の見直し提案も聞いておくと交渉の材料になります。
3. メニューの原価率を再計算する
小麦関連の商品は、原価率を再計算して優先順位をつけます。原価率と値付けの考え方は、飲食店の原価率と値付けの基本で詳しく解説しています。全品を一斉に上げるのではなく、利益率の低い品から見直すと、お客様の反応も見やすくなります。
4. 値上げ・改善の手段を組み合わせる
- 量やトッピングの調整(グラム数の見直し、セット構成の変更)
- 値上げの理由を店頭やSNSで丁寧に説明する
- 原価の低いメニューやセットへの誘導
- ロスの削減(仕込み量の管理、廃棄の記録)
値上げは一度に大きく行うより、小幅に段階を踏むほうが受け入れられやすい傾向があります。効果はお店や客層により異なるため、売上や客数の推移を見ながら調整してください。
5. 今後の情報を継続して確認する
製粉各社の価格改定発表、次回(2027年4月期)の政府売渡価格の動きは、経営計画に直結します。農林水産省や業界紙の発表をこまめに確認しましょう。
まとめ
輸入小麦の政府売渡価格は10月期に12.0%上がります。小麦粉を使うメニューが多い店ほど、早めに仕入れ額の把握・仕入れ先への確認・原価率の再計算を進めることが大切です。食品全体の値上がりについては食品値上げ、9月に年内最多へもあわせてご覧ください。
出典
- 農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」(2026年9月9日)
- 食品新聞(2026年9月9日)「輸入小麦の政府売渡価格 10月期は12%引き上げ」
- 流通ニュース(2026年9月25日)「日本フードサービス協会/8月の外食売上4.9%増」

